クリプトスポリジウム症
クリプトスポリジウム症は、寄生虫の一種であるクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)による感染症です。
もともと、クリプトスポリジウムはウシやブタなどの腸に潜む寄生虫として知られて来ましたが、ヒトでの感染例が報告されています。
クリプトスポリジウム症の症状は、食欲低下、吐き気、下痢、腹痛が主です。
潜伏期は4~10日で、症状が出ない方もいます。
免疫力が低下している方では、胆管炎や膵炎の報告もありますし、下痢も重症化することがあります。
世界におけるクリプトスポリジウム
現在も、衛生環境の整備されていない途上国を中心に世界に広く分布しています。
クリプトスポリジウムは、塩素消毒が十分に効かず、低温でも数カ月間病原性を維持するため、
水道水を介しての集団感染が生じ問題となることがあります。
「水」の種類別には、
廃水(46.9%)>地表水(河川や湖沼)(45.3%)>生水(31.6%)>飲料水(25.5%)>貯水池水(24.5%)>地下水(18.8%)>プール水(7.5%)>海水(0.20%)
の順に多く存在するようです (2020年に発表された系統的レビュー・メタ解析論文)。
乾燥や加熱には弱い
クリプトスポリジウムは乾燥に弱く、4時間程度で感染性は急速に低下します。
熱水、65℃・30分間や70℃・1分間などで死滅します。
このほか、1,000ppmの二酸化塩素、1ppmのオゾン水、過酸化水素ガスプラズマも有効です。
このように、飲料水や食品のオ-シストによる汚染防止をおこなう必要があります。
クリプトスポリジウム症の治療
残念ながら、有効な駆虫薬はありません。
下痢で脱水が見られる場合は、点滴による補液などが適宜おこなわれます。
基本は口からの感染ですので、手は、よく洗いましょう。
参考
- 東京都感染症情報センター. クリプトスポリジウム症 Cryptosporidiosis. http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/crypto/
- Taghipour, A., Khazaei, S., Ghodsian, S., Shajarizadeh, M., Olfatifar, M., Foroutan, M., Eslahi, A. V., Tsiami, A., Badri, M., & Karanis, P. (2021). Global prevalence of Cryptosporidium spp. in cats: A systematic review and meta-analysis. Research in Veterinary Science, 137, 77–85. https://doi.org/10.1016/j.rvsc.2021.04.015
- 健栄製薬. 各種微生物に対する消毒薬の選び方. https://www.kenei-pharm.com/medical/countermeasure/microbe/17.php