レクリエーション・スイミングでの、「レジオネラ菌」について

水泳といろいろな健康を考えるシリーズ。

水泳は、心肺機能や、生活習慣病などにも良いとされています。

一方で、プールでは、健康上、注意しておくべきこともいくつかあります。

例えば、プールに含まれる細菌や、プールの消毒する際に生じる化学物質など、環境中のもの。

また、こうした環境中のお話は、水泳に限らず、水辺でのレクリエーション一般に、重要な注意事項となっています。

今日は、とくに、水辺でのレクリエーションと「レジオネラ症」の関係について見ていきましょう。

レジオネラ症って?

レジオネラ症は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)などに代表されるレジオネラ属の細菌により引き起こされる感染症です。

レジオネラ症は、大きくわけて2つあります。

  1. 重症の肺炎を引き起こす「レジオネラ肺炎(在郷軍人病)」
  2. 一過性で自然に改善する「ポンティアック熱」

です。

レジオネラ属菌は、川、温泉、ジャグジー、プール、温水の配水管、冷却塔など、さまざまな自然環境や、人工的な環境の水辺に広く存在しています。

レジオネラ症の歴史

レジオネラ症には、古い歴史があります。

レジオネラ肺炎は、1976年に、米国フィラデルフィアにおける在郷軍人集会(これを、Legionと言います)で集団肺炎として発見されたところから、legionnaires’ diseaseと命名されました。

これに対して、ポンティアック熱は、1968年に起こった米国ミシガン州ポンティアックにおける集団感染事例にちなんで命名されました。

水辺でのレクリエーションと、レジオネラ症について

これまでに、水辺でのレクリエーション(スイミング・プール、スパ・プールやそれに準じる環境)でのレジオネラ症は世界中で報告されています。

これを統合的に分析した結果が報告されています(2)。

レジオネラ属菌は、様々な水環境に存在しますが、スイミング・プール、スパ・プールや、その他レクリエーション目的で使用される環境(温泉、ホットタブ、ジャグジー、天然温泉)に関連したレジオネラ症の系統的分析は行われていませんでした。

今回ご紹介する調査研究は、出版された論文を系統的レビューしたものです。データは47件の論文から抽出され、42件の出来事(散発例17件、アウトブレイク25件)と、その中に1079件の症例を含んでいます。

そのうち57.5%がポンティアック熱と診断され、死亡例はなく、42.5%がレジオネラ症で、致死率は6.3%でした。

レジオネラ症のアウトブレイクは?

42件の出来事のうち、レジオネラ症のアウトブレイク、または、繰り返しのレジオネラ症患者の発症があったのは、25件でした。

この中で、一般家庭での湯船で3件、ホテルでのスパ・プールや大浴場20件、温泉や川などの水環境が2件でした。

残りの17件は、個別にあらわれたレジオネラ症の例です。

レジオネラ症が起きたのは、どんな環境?

  • 40度以上 (13.6%)
  • 過負荷 (4.5%)
  • モニタリングや記録なし (27.3%)
  • フィルターのクリーニングやメンテナンスの欠如 (18.2%)
  • 水の循環回路の技術的な不具合 (18.2%)
  • 消毒薬の量の不足 (31.8%)
  • 不適切な処理 (31.8%)

などがあるようです。

ほとんどの報告は、公共のスパ・プールで起きています(22の出来事、744例)。

レジオネラ症を防ぐために

ここまで見てきましたように、レジオネラ症は、病気や細菌のことだけでなく、水環境やその管理がとても重要です。衛生管理者、政策意思決定者、施設の管理者、技術者、機械の製造業者、など、様々な専門家が、関わっていくことがのぞまれます。

参考文献

  1. 厚生労働省. レジオネラ症. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html
  2. Leoni E, Catalani F, Marini S, Dallolio L. Legionellosis Associated with Recreational Waters: A Systematic Review of Cases and Outbreaks in Swimming Pools, Spa Pools, and Similar Environments. Int J Environ Res Public Health. 2018;15(8):1612. Published 2018 Jul 30. doi:10.3390/ijerph15081612